EC2 AutoScalingは、アプリケーションの負荷に応じてAmazon EC2インスタンスの数を自動的に調整するAWSのサービスです。
今回は、EC2 AutoScalingについて紹介します。
Auto Scalingの機能
- インスタンス数の自動調整:EC2 AutoScalingは、アプリケーションの負荷や設定したスケジュールに基づいて、EC2インスタンスの数を自動的に増減させます。
- スケーリングポリシーの設定:AutoScalingグループに対して、スケーリングの条件を定義するポリシーを設定できます。主な設定項目には以下のものが存在します。
- 最小・最大インスタンス数: グループ内で維持するインスタンスの最小数と最大数
- 希望するキャパシティ: 通常時に維持するインスタンス数
- スケーリング条件: CPU使用率やネットワークトラフィックなどのメトリクスに基づく条件
- 異常インスタンスの自動検知と置換:AutoScalingは、グループ内の異常なインスタンスを自動的に検出し、新しい正常なインスタンスに置き換えます。
- スケジュールによるスケーリング:時間帯や曜日に応じて、インスタンス数を自動的に調整することができます。例えば、以下のような調整が可能です。
- 日中はアクセスが多いため、インスタンス数を増やす
- 夜間はアクセスが少ないため、インスタンス数を減らす
- Warm Pool機能:Warm Pool機能を使用すると、事前に起動済み・初期化済みのEC2インスタンスをプールに保持しておくことができます。
- ライフサイクルフック:EC2 AutoScalingでは、インスタンスの起動や終了などのイベント(ライフサイクルイベント)が発生した際に、カスタムアクションを実行できます。
これらの機能を組み合わせることで、EC2 AutoScalingは柔軟で効率的なリソース管理を実現し、アプリケーションのパフォーマンスと可用性を向上させることができます。
Auto Scalingのメリット
EC2 Auto Scalingには以下のような主要なメリットがあります。
パフォーマンスと可用性の向上
- 需要に応じた自動スケーリング: アプリケーションの負荷に合わせてEC2インスタンス数を自動的に増減させ、最適なパフォーマンスを維持します。
- 高可用性の実現: 複数のアベイラビリティーゾーンにインスタンスを分散配置し、サービスの可用性を向上させます。
- 異常インスタンスの自動置換: 障害が発生したインスタンスを検知して自動的に新しいインスタンスに置き換えます
コスト最適化
- リソースの無駄を削減: 需要が減少した際にインスタンス数を自動的に減らし、不要なリソースを削減します。
- 従量課金の最適化: 実際に使用したリソース分のみ課金されるため、コストを最適化できます。
運用効率の向上
- 自動化による運用負荷軽減: スケーリングを自動化することで、手動でのリソース管理が不要になります。
- 予測スケーリング: 機械学習アルゴリズムを用いてトラフィックの変動を予測し、事前にリソースを準備します。
柔軟な設定
- 動的スケーリング: リアルタイムの使用率変化に応じて、設定したポリシーに基づいてスケーリングを行います。
- スケジュールスケーリング: 予め決められたスケジュールに従ってインスタンス数を調整します。
負荷分散との連携
- Elastic Load Balancingと連携し、トラフィックを複数のインスタンスに分散させることができます2。
これらのメリットにより、EC2 Auto Scalingはアプリケーションのパフォーマンス、可用性、コスト効率を向上させ、運用負荷を軽減する強力なツールとなっています。
Auto Scalingの注意点
EC2 Auto Scalingを使用する際には、以下の注意点に留意する必要があります。
急激なアクセス増加への対応
Auto Scalingは、急激なアクセス増加(スパイク)に即座に対応することが難しいです。
これは以下の理由によります。
- AMIからEC2インスタンスを作成し起動するのに時間がかかる
- インスタンスの起動と初期化に時間を要する
急なアクセス増加に対応するには、以下の対策が必要です。
- Amazon CloudFrontなどの高速コンテンツ配信ネットワークサービスの導入
- Amazon API Gatewayを使用した処理上限の設定
- サーバーレスサービスの活用
インスタンス消滅時のデータ保護
Auto Scalingによってインスタンスが終了する際、そのインスタンス上のデータが失われる可能性があります。
対策として、以下が考えられます。
- バックアップデータの作成設定
- ライフサイクルフック機能を使用したカスタムアクション(データバックアップなど)の実行
- Amazon RDSなどの永続的ストレージサービスの利用
インスタンスの状態把握
Auto Scalingグループ内のインスタンスの健全性を適切に監視することが重要です。
- ヘルスチェックの猶予期間を適切に設定する(デフォルトは300秒)
- EC2のステータスチェックやElastic Load Balancingのヘルスチェックを活用する
セッション情報の管理
EC2インスタンスのローカルディスク(EBS)にセッション情報を保存しないようにしましょう。
理由としては、以下の通りです。
- スケーリングによってEC2インスタンスが突然停止する可能性がある
- セッション情報が失われると、ユーザーエクスペリエンスに影響を与える
代わりに、以下のような対応が考えられます。
- DynamoDBなどの別のサービスでセッション情報を管理する
- ステートレスなアプリケーション設計を心がける
これらの注意点を考慮し、適切な設定と設計を行うことで、EC2 Auto Scalingの利点を最大限に活用しつつ、潜在的な問題を回避することができます。
Auto Scalingの主要コンポーネント
EC2 Auto Scalingの主要コンポーネントは以下の3つです。
起動テンプレート
起動テンプレートは、EC2インスタンスを起動する際の設定をまとめたものです。
主な設定項目には以下のものがあります。
- 使用するAMI (Amazon Machine Image)
- インスタンスタイプ
- キーペア
- セキュリティグループ
- ストレージ設定
- IAMロール
起動テンプレートを使用することで、一貫した設定でインスタンスを起動できます。
Auto Scaling グループ
Auto Scaling グループは、スケーリングの対象となるEC2インスタンスの集合です。
主な設定項目には、以下のものがあります。
- 最小・最大・希望するインスタンス数
- 使用する起動テンプレート
- インスタンスを配置するVPCとサブネット
- ヘルスチェックの設定
- スケーリングポリシー
Auto Scaling グループは、指定された条件に基づいてインスタンス数を自動的に調整します。
スケーリングポリシー
スケーリングポリシーは、いつ、どのようにインスタンス数を変更するかを定義します。
主なタイプには、以下のようなものがあります。
- ターゲット追跡スケーリング: 特定のメトリクス(CPU使用率など)の目標値を維持
- ステップスケーリング: メトリクスの変化に応じて段階的にスケーリング
- シンプルスケーリング: 単一のメトリクスしきい値に基づくスケーリング
- スケジュールに基づくスケーリング: 指定した時間にスケーリングを実行
これらのコンポーネントを組み合わせることで、アプリケーションの需要に応じて自動的にリソースを調整し、パフォーマンスとコスト効率を最適化することができます。
まとめ
今回は、EC2 AutoScalingについて紹介しました。
ご参考になれば、幸いです。
以上になります。ありがとうございました。
参考
https://www.nri-digital.jp/tech/20210608-5037
https://qiita.com/Yona_Sou/items/bfcf56ccf2ea45c744e8
https://dev.classmethod.jp/articles/introduction-2024-amazon-ec2-auto-scaling/
https://qiita.com/pohd_ccoe/items/8d5afc62c3488df18b39
https://www.alibabacloud.com/help/ja/auto-scaling/use-cases/reduce-costs-through-scaling-strategies
https://www.openupitengineer.co.jp/column/it-technology/323
https://o2mamiblog.com/aws-ec2-autoscaling-beginner/
https://www.rworks.jp/system/system-column/sys-entry/21683/
https://dev.classmethod.jp/articles/how-to-create-ec2-auto-scaling-group/
https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/autoscaling/ec2/userguide/auto-scaling-groups.html
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